クレー射撃上達虎の巻 《頬付の重要さ!》

 


脊柱管狭窄症”なる病を得た。

スコアの低下はいわずもがな、

腰痛のために銃を構えるのさえままならない。

ものの本によれば根本的な治療は手術のみ、らしい。


同じ病の手術をした何人かの友人の話を聞くと、

術後の様子があまり芳しくない。

そんなこともあり、医者に行くことを躊躇し、

一年半ほど、痛みと付き合ってきたが限界。

大学病院の“脊髄専門科”を訪ねる。


最近はパソコンの画面だけを見て、

患者の方を見ないで診察?をする医師や、

検査のデータの報告(説明ではない)を

伝えるだけの医師が少なくない。

しかしこのK先生は、診察室のドアを開け、

目が合った瞬間に「この先生は信頼できる」と直感した。


いかに高名な先生でも患者が医師を信頼できなければ、

良い結果には結びつかないだろう。

予期したとおり手術となったのだが、

ここで問題が生じた。


生理検査の結果、ヘモグロビンA1C⇒6、8

ナント「血糖値が高くて手術ができません」ときた。

「まず血糖値を下げる治療が先ですね」

「どーしたらいいんだべ?」

「体重を下げましょう」

「どのくらい?」

「身長から割り出したあなたの理想的な体重は68㎏」


当時の私の体重は93㎏。


「先生、手術で助かる前に空腹と栄養失調で死ぬ!」

「とりあえず、食事療法だけで80㎏まで頑張りましょう、

そうすれば薬を用いなくても血糖値は下がります


この先生を信頼してしまった以上、

言うことを聞くしかない。


痛み止めの薬は服用しつつ、食事療法。

一月ほどは三食全て、糖質、炭水化物抜き、

つまり、米、パン、麺類、甘味抜き、

酒は蒸留酒(ウィスキー、焼酎)のみ、

ただし肉、魚、野菜は腹いっぱいOK、

主食の代わりは豆腐か納豆。

これで約10キロ減! 84㎏!


意気揚々と「やったぜ!先生」

「よく頑張りましたね」と、口では言っているのだが、

先生の“目”は私にこう語りかけていた。

「おまえは、ものすごいデブが普通のデブになっただけ、

あと10キロ頑張りなさい!」

それでも、

ヘモグロビンA1C⇒5,9

めでたく、手術となったが、

このダイエットが後でクレー射撃にとんでもない結果をもたらすことになる。


術後の経過は良好!

多少の違和感は残るが普段の生活に支障はない。



二か月ほど経ったところで、

リハビリ?を兼ねて射場へ。

腰の痛み(正確にはケツの痛み)は消えた、

以前のスコアは出せるハズ!

1ラウンドを撃った後、血の気が引いた。


当らない、

全く当たらない。


気を取り直し2ラウンド目、

クレーを追い「ヨシ、もらった!」というところで、

いつものように引き金を引く、

当たらない。


以前のアベレージの半分にも届かない。

自分でも気付かないが、体が言うことを聞いてくれないのだろうか?

無意識に腰をかばっているのだろうか?

思い当たることが無いまま射場を後にする。


翌週は別の射場で「初心に返って一発撃ち!」

かつて先輩に「初矢だけで18〜20枚撃てたら

次のステップに移れ」と言われたのを思い出したからである。


当たらない!

とうとう、一ケタのスコアを記録する。

(最近AKB48の永尾マリヤなるムスメが、

教習射撃で16枚を撃ったのを思い出した)


これが何回か続いたあとで、あることに気が付いた。

クレーを追う目と銃口が一致していない。

頬に伝わる感触が以前と違う。

何故だ!

肩付けOK,頬付OK,照星と中間照星の位置関係OK、

のハズだった。

ところが、以前のような照星と中間照星の位置関係に合わせると、

頬と銃床が“接触”はしてはいるが“密着”していないのだ。

何故だ!


退院後も体重を管理し、82〜84㎏をキープしている。

10キロ強のダイエットをしたわけである。

当然、頬の肉(銃床と頬骨の間の)も減っているのだ、

(そういえば朝、顔を洗うときに顔が、

ひと回り、いやそれ以上小さくなった実感がある)

つまり相対的にベンドが下がったことになる。

よく言われる“頬付が甘い”状態だ。


そこで、肩付けの位置をやや上にずらし、

以前のように銃床に頬が“密着”する状態にした。

公式7番セット。

結果、初矢のみの一発撃ちで21枚。

安堵の胸をなでおろす!



当らないからと、いたずらに、数を撃つのではなく、

何故当たらないかを考えながら撃つことの重要さを、

また、頬付がいかに大切であるかを、

“脊椎間狭窄症”は教えてくれた。

下手な鉄砲(間違った射法、技法)は、

数撃っても当たらない。


付け加えれば、

当然胸の肉も減っているので、銃床の長さも相対的に

短くなっている筈だが、その影響は少ないようだ、

それに、これはパッドの厚さでカバーできる。

短かすぎる銃床は長すぎる銃床よりも弊害は小さい。