犯人の身柄確保!!


 以前、センサーライトが設置されている我が家の駐車場から

自転車を盗まれたことがある。

煌々とした灯りのなかでの大胆な犯行である。


以来、深夜には灯りと連動して家の中でチャイムが鳴るようにした。

音量は、表(犯人)には聞こえない大きさである。

“作業中”に、とっ捕まえようという寸法だ。


先日、このチャイムが鳴った!

深夜11時を過ぎた頃である、

無論来客のある時間ではない、

すわっと、表に出るが人影はない、

ライトはまだ駐車場を照らしている。

自転車は?無事だ。

ほかに盗まれたものも見当たらない。


翌日も同じような時間にチャイムが鳴る、


やはり人影はない。

玄関ドアを開ける気配に気ついて逃走したか?

或いは誤作動?


これが4日ばかり続いた、

相手がみえないというのは不気味なものである。

家人も心配するので、止む無く警察へ連絡、

状況を説明すると、最寄の交番で、

その時間帯にパトロールをしてくれるという。

最近は何かと風当りの強い警察であるが、

地域住民にとっては、やはり心強い存在ではある。


一日、二日はチャイムがなることはなかった。

トロールのおかげか。


だが三日目、またしてもチャイムが!


そろそろパトロールにまわってこようという時間である。


今度はドアを静かに開け、足音を忍ばせて歩を進める。


いた!

コイツが犯人か、

数メートルの距離をおいて対峙し、互いに目は逸らさない。


こやつ、多少は空手の心得があるのか?『猫足立ち』で身構えている、

全身黒ずくめ、身長は相当小柄であるが

私を見上げる眼光は鋭い。


飛び掛かってくるような気配を感じた。


左前に構え、間合いを詰めるとさらに身を低くした。


こちらも相手の目線の高さに合わせるべく、身を沈める、沈める、もっと沈める、

ついにはしゃがみこんだ。


すると、この“犯人”はナント私の膝元にすり寄ってきた。

「おまえか、夜な夜なウチのチャイムを鳴らすのは?」


「ニャオン」


長いシッポをピンと立てて“尋問”に答えた。


野良か、飼われているものかわからないが、

風貌に似合わず人懐っこい。


めでたく?犯人の身柄を確保!

名前を仮に『クロニャン』としておこう。


翌日、交番を訪れ

「おかげさまで、あれから異常はありません、

有難うございます」と礼を述べる。


「また何か変わったことがあれば連絡を下さい」

若い警察官の爽やかな笑顔が印象的であった。


まさか、クロニャンの仕業でしたなんて言えないよね〜。