クレー射撃上達虎の巻  《 満射の秘訣 》



 T射場は

撃ち易い射場かと言えば“否”の部類にはいるだろう。

そこでNさんが初めて満射を撃った。

但し後述するが“撃ち易い射場”とか“撃ち難い射場”と決めるのは禁物である。



この射場は左右に低く飛ぶクレー
は後方に立ち並ぶ木立を横切るように飛ぶ。

結果、クレーが実際より早く感じられる。


また冬ともなれば地形の関係で左の低いクレーは早く撃たなければ、

積もった雪の上へすぐに着地(着雪)してしまう。

おそらく、この射場は(特に冬場は)ストレートの規定の高さ1.0mは飛ばせないのではないか?



「それにしても満射の秘訣ってあるのかな」

とN君。

「いや、それはない」



「平均で20枚以上を割れるようになった今、

解っていると思うけれど1ラウンド、25枚のうちストレートは5枚、


右10枚、左10枚だ、

一つの射台ではストレート1枚、右2枚、左2枚。


つまりすべてのストレート、若しくは

特定の左右のクレーを2枚外した場合は別として、

同一ラウンドでは、ミスをしたクレーと同じクレーは必ず割っているはず」

「そうか」


「つまり20点以上を撃てるようになった時点で、

あるいは一度でも満射を撃った時点で、その人の実力は

常に満射を撃てるものと考えていい、何が言いたいのかと言えば…」


「“何が原因で満射を撃てなかったか”ってこと?」


「そう、命中するためには多くの要素がある、


スタンス、頬付、片付、グリップの強さ、目の焦点を何処に合わせておくか、


銃の振り始めのタイミングとスピード、スウィングの速さ、等々


それらが全て満たされた時に“命中”となる、


そのうちの、どれか一つでも不完全であれば“失中”となる、


本来満射を撃てる実力があるのに、何かの原因でひとつ、あるいは複数のミスをしてしまった、

その原因を探し、それを克服するのが練習」


「そっかァ、何となく解るような気がする」



馴染みの居酒屋のテーブルの上に

私が昨年満射を撃った時のスコアシートを並べてみせた。


見ると、下のスコアシートは25枚全て初矢、つまり一発目で命中している。

何度か満射の経験はあるが、全て初矢で命中したのは、

未だにこの時だけである。


やや上気した顔でNさんが言った。


「いつもこうだと、鉄砲屋さんが(弾が売れなくて)困るね」


「これが自分の実力、仮に次の満射で2の矢が1枚あったら

“この1枚は何故2発目でなければ割れなかったのだろう”

また1枚失中であれば“何故1枚外したのだろう(もし、それが右か左のクレーであれば

そのラウンド内で同じクレーは命中しているのに)”と考えるようにしている」


「いつも22,3点で『ある時調子が良くて満射を撃てた、ラッキー』ではないってことか?」


「そう、若し満射の秘訣があるとすれば

ただ数を撃つのではなく、絶えず考えながら撃つ練習だろうか」



射撃談義はいつまでも終わらない。












































































































過激なタイトルですねェ。

江戸は宝暦年間

あの田沼意次の活躍した時代、八丁堀に実在した元御典医『高橋玄秀』がそのひと。

あらゆる難病、とりわけ『気の病』を治す名医として江戸中の評判でした。


ある大店の娘さんが寝たきりになってしまいました。


現代で言う『鬱病』のようなもの。

口もきけず、食事ものどを通りません。

身は痩せ細るばかり。

江戸中の医者に診せましたが、薬石効無し


そこで玄秀先生に声がかかります。


娘を診た玄秀先生、診察をするでもなく、世間話をして帰ります。

来る日も来る日も、冗談や芝居の話をしては帰っていきます。


しかし不思議なことに娘は薄皮を剥がすように、

明るく元気になっていきます。

そして玄秀先生の顔を見ただけで、声をたてて笑うようになりました。


娘の父親はどんな治療をしたのか問いただしても

玄秀先生はニヤニヤして「それは秘密です」と答えようとはしません。


それでも執拗に尋ねると、ようやく教えてもらうことができました。

じつは玄秀先生、診察のとき、娘の枕元で片膝を立てて、

の隙間から、男子のイチモツをチラチラと見せていたのです。

相手は年頃の娘、思わず病のことを忘れ、笑ってしまいました。

笑いが出れば、しめたもの、あとは快方にむかうのみ。


一種の精神療法といえるのかも知れません。



さて、この話にはサゲが続きます。



この娘のお父さん、

もっと元気にしてやろうと、

娘の傍らに行き、

「これを見なさい」と、かのイチモツを

“チラチラ”でなく、モロに出したからたまらない。

娘は目を回してしまいました。


あわてて玄秀先生を呼び、ことの顛末を話したところ、

「ナニ、少しではなく、全部だしてしまったのですか、

それは薬の効きすぎです」


おあとがよろしいようで。


立川談志 『金玉医者』