《 口相 》?!



目は口ほどにものを言い』とはよく言われること。

しかし時に、口も目と同様に、

いや、それ以上にその人の心の奥底を雄弁に物語る、







人相を観ることなどできないが、

馬齢を重ね、多くの人間と交わってくると、


ふとした表情や仕草、言葉から

見たくもないものが見え、

聞きたくもないことが聞こえてくる。


よく目をみると、その人柄がわかる、という話を聞くが、

残念ながら自分にはよくわからない。



しかし平素窺い知ることのできない、その人の本質的な部分が

特徴的なほど、

『口』は無言で語りかけてくる。


言葉や文字では上手く表現できないが、


それは、形であったり、一瞬の動き、etc。







どこかの国の、口の歪んだ大臣を思い浮かべていただきたい。


これほど極端な場合は“だれでも”そのキャラクターを

容易に推し量ることができるのではないだろうか。


周りの人の心を顧みない言動は周知のとおりである。


それでも財を成し、国の要職に就く。


考えてみれば、

人間として大切な、ある情緒は、

富や社会的な地位を得るためには必要のないもの、


と言うより邪魔なものなのかも知れない。

(政治家などは、むしろ必須要件?)



かつて、同じ『口相』を持った男が何人かいたが、

例外なく彼らの『口』は嘘をつかなかった。


皆、一見、人当りよく、腰の低い好人物である。

しかし折に触れた時にその対極の素顔を表す。


この口を持つ者は、社会的地位や、

経済的な境遇などとは相関関係はない。

むしろ成功者の範疇に多く存在する。




ある時、尊敬する社長の会社に一人の男性が入社してきた。

元銀行の支店長である。


全てに如才なく、多くの人には好人物に映った。

銀行マンだけに経理には明るい。



だが歓迎パーティーのステージの上で余興に興じる

彼の口が一瞬恐ろしい形にみえた。

時間にすると、何十分、いや何百分の一秒か。


社長に告げるべきか迷った、

何人かの友人に話したところ予想通り失笑を買った。


数年後、突然その会社は倒産した。

間髪を入れず、その元支店長は自分の会社を立ち上げた。


切れ者と言われた社長の気付かないところで、

簿外の資金が動いていたのである。


口は目ほどにモノを言う。