クレー射撃上達虎の巻《よく見える照星に替えたら当たらなくなった?》その2




先ず1図、標準的な照星と中間照星の位置関係です。

よく言われる、クレーを「照星」に乗せて撃て!というヤツがこれです。

なぜAだけ下を狙ったときに命中するかは、

別稿 クレー射撃上達虎の巻《弾は狙ったところにいかない》参照。

これを横から見た1´図だと、目線との関係がお分かりいただけると思います。


一般に、技量があがってくると、照星と中間照星がこれよりも、やや離れ、

見下し量Cが大きくなる傾向があります。


同様に横から見ると、2´図の位置関係になり、

狙点はクレーの、より下に移ることがお分かりいただけると思います。

そのメリットは左右の低いクレーが風などで影響を受けたときの、

微妙な変化をより捉え易いことにあります。


ここでKさんの長い「照星」のはなしに戻りましょう。



もうお気付きでしょうか?

照星が長くなったということは、その後端がC´だけ、

Dの位置まできたと考えると、

Kさんは従来通り、1図の照星の位置関係で狙っていたのですが、

実は、2図の状態で撃っていたことになります。

(付け加えれば、この時、頬付もやや甘くなっている筈です)


極端にいえば、A=30センチ、B=60センチとすれば、

Kさんは長くなった照星では、60センチ下を狙わなくてはならないのに、

以前とおなじ30センチ下を狙っていたことになるのです。



但し、クレーを捕える距離にもよりますが

スコアが以前と大差がないということは、

この程度の狙点のズレではパターンの範囲内だと言うことです。

つまり、パターンの中心ではなく、外周の何粒かが当たっていた、

見方によっては“ラッキー”な命中。


ストレートであれば、セットナンバー3の5番

左であれば、セットナンバー3の3番

右であれば、セットナンバー2の3番

で試してみると、この“理屈”が体感できると思います。



よく“教え魔”と言われる御仁が「(オレが)1メートル前を撃って当たっているのだから

(お前も)1メートル前を撃て」と教えている風景を目にします。

しかし、その人のスイングのスピード、反射神経の遅速によって

どのくらい前を撃つかという、その距離は各人同じではないことは、

容易に想像がつくでしょう。

同様に、どのくらい下を撃てば当たるのか?

と言う命題も、各人が同じ見下し量で撃っているとは限らないのですから、

『単純に何センチ下』とはいえないのです。


因みに現在、最も合理的と言われる“近代射法”を体得した射手ならば、

「前を撃て」とは言わない筈です。

勿論“但し”と言う条件がつくのですが。

(これについては別項で詳述)



上達のコツが若しあるとすれば、練習量の多さではなく、

要は、この、変わりようのない“物理的な真理”を理解したうえで、

あとは自分なりのスイングのスピード、狙点の決め方等々を加味し、

基本を逸脱しない範囲で、自分なりの撃ち方、射法を体得構築していくのが、

正しい練習といえます。


それにしてもトラップ射撃というのは奥が深いですねぇ。