クレー射撃上達 虎の巻 §15 《 大会直前の満射は要注意 》

クレー射撃では25枚のクレー(皿)を飛ばし、何枚撃ち落とすかを競う、

これを1ラウンドと呼ぶ。

ボーリングで言えば1ゲームである。

そのクレーを25枚全て撃ち落とすことを満射と呼ぶ、

ボーリングならばパーフェクトである。



Aさんから電話である。

声が弾んでいる。

公式大会前日の練習で満射を撃ったと言う。


この時、私は翌日の試合での“負け”を予感した。

おそらく、普段の平均に手がとどけば良いほうだろう、

下手をすれば、それ以下。

その理由は今は言わないほうが良い。

こう言う経験も必要なのだ。



今の全クレの体制で何故世界に通用する射手が育たないのか

(一部女子のトップシューターを除いて)を考えれば

自ずと答えはでるのだが。



 満射(天国)と、そのあとの負け(地獄)を味あわせたほうが

今後,より大きく成長する糧となる。


翌日、意気揚々と試合に臨んだが、


結果は案の定“惨敗”であった(少なくともAさんにとって)

そして,

“練習と試合の違い”という、口に苦い良薬。

数日後の“残念?会”


「いいかい、試合は絶対にベストの状態で臨んではいけない」(少し、先輩面をして)

「何故?」


「練習の最大の成果を出すのが試合、その成果つまり

ピークを練習で出したらそのあとはどうなる?」


「下降線?」


「正解、つまり試合は昇り坂の状態で迎えなければならない、

幸か不幸か、前日の練習で満射という最高の状態を作ってしまった」


「だから試合でも満射を出せると思った」


「確かに適切な練習のおかげで技量は上がった、

でも試合に勝つために必要なことは技量だけではない、

これが、このスポーツの奥の深いところでもあるんだ」


「でも、モチベーションも最高にあがっていたのに」


少し怪訝そうな顔をしている。


「この次に面白い話を聞かせよう」


おそらく、今は“何故、前の日にあんなに絶好調だったのに試合では

ダメだったのだろう”と頭が混乱しているに違いない、

少し時間をおいて、もう少し詳しい話をしよう。