パッヘルベルとサラ・ブライトマン

 


アキュフェーズのCDプレイヤーDENONのプリメインアンプ、スピーカーはB&W,


私のお気に入りのシステム、そして

友人の所有するオーディオシステムです。




これだけでオーディオに精通した方ならば、

この持ち主がどの程度音楽、そして音に関して

造詣が深いか凡そおわかりいただけると思います。


女性でありながらオーディオに興味があるというだけでも、

非常に珍しいと言えるでしょうが

“音”にまで一家言を持つ女性はそう多くはないでしょう。

おまけにJBLの“パラゴン”を知っているのですから、まさに驚嘆に値します。



人とモノとの縁とは不思議なもので

“名刀は名将を呼ぶ”といわれるように、

優れたモノはその価値のわかる人のもとへ行くといわれます。


アキュフェーズの製品は

“どうだ、すごい音だろう”という鳴り方はしません、

良くも、悪しくも原音をそのまま忠実に再生します。



DENONのアンプは私もかつて愛用していました。

現在は真空管を使用していますが、

若し、トランジスタアンプを選ぶとすれば、

このメーカーを選ぶでしょう。



同社のカートリッジは今もNHKのFM放送スタジオで使われています。

価格も含めハイエンドオーナーと言われる人達に支持される所以です。



余談ですがアキュフェーズが創業を始めた年は

奇しくも彼女の生年と同じです。



 持参したパッヘルベルのカノンを聴いてみます。

室内楽曲ですが、フルオーケストラ、ピアノ、フルート、

ハープ、イージーリスニングスキャット

はてはエレキギターによるロックアレンジ、etc

これほど多くの形態で演奏される曲も珍しいでしょう。



ピチカートから入るパイヤールや

ミュンヒンガー編シュトゥットガルトが著名ですが

音の美しさではイ・ムジチが群を抜いていると思います。

彼女は私同様弦楽器の音に惹かれます。



ヨーロッパではこの種の音楽はスタジオでなく、

築数百年を経た教会などで録音されることが多いのです。


高い天井はそのホール独特の響きと余韻を持っています。

それをこのシステムは忠実に再現し、

彼女はそれを感じ取っています。


そう、音を“聞いて”いるのではなく、

“感じて”いるのです。

大袈裟でなく、その美しい“弦”の音は心が洗われるようです。



 1戸建とは言え、夜の住宅街に、

通奏低音は良く響き、

バイオリンは良く透ります、

ボリュームを少しだけ下げましょう。


 次は彼女の愛蔵版サラ・ブライトマンのアベ・マリアを

CDプレーヤーのトレイに乗せます。


澄んだなかにも女性独特の湿り気を含んだボーカルを

ノーチラスと呼ばれる独特の形をした

ツィーターを持つB&WーS805は瑞々しく聴かせてくれます。


ウーハーは小口径故に量感はともかく、

定位は素晴らしいものがあります。


この部屋には理想的な大きさかもしれません。


このメーカーのスピーカーは、

あのアビーロードスタジオのモニター用として有名です。



また最近では、道内最大手のO阪屋の視聴会でも用いられています。


まるで引きこまれるような、滑らかなブライトマンの歌声ですが、

途中一ヶ所だけ大きくブレスの音が

入っているのを彼女は感じとっているでしょうか?



でも、それを質問することをやめました。

重箱の隅をつつくような聴き方は彼女に相応しくありません。

 

 ひとつ、惜しむらくは、間取りの関係で仕方のないことですが、

スピーカーの後ろが開口部(窓)になっていることです。

もし壁(それも硬い)であれば、

パッヘルベル通奏低音部がよりクッキリと出てくるはずです。


 美味しいコーヒーをいただきながら曲後の余韻を楽しんでいると、

大切にしているというウォルナットの小箱を持ってきました。


オルゴールです。


曲名はアベ・マリア


それを聴きながらチョットしたイタズラを思いつきました。



丁度、傍に手ごろな大きさの木製の箱があったので、

その開口部を彼女に向け、

その上にオルゴールを置いて鳴らしてみました。


「わォ!」


普通の女性ならば気付かないか、

せいぜい音が大きくなったと思う程度でしょう。



しかし彼女の感性は、

奥行きと広がりが加わり、

ふくよかになったその音の変わりようを見事に感じとっていました。


スピーカーやオルゴールは『箱』で、

更にはそれを聴く部屋如何で劇的に音が変わるのです。


 極上のシステムで聴くパッヘルベルとブライトマン

至福のひと時です。