クレー射撃 虎の巻 §13 《 視点、焦点、画像構成 》
地元射場で練習のあと、
Aさんと落ち着いた雰囲気の喫茶店でコーヒータイムとなった。
席は窓際である。
「スコアはかなり安定してきたね、
次のステップのために今日はかなり大切な話をしよう」
「な〜に?」
「Aさんは銃を構えた時に、どこに焦点を合わせている?」
「まえに言われたようにクレー放出口の少し上でセンターマークの少し右」
「ウン、位置としては間違いではない、それではチョット外を見てごらん、
〈手前〉に歩道がある、そして車道を挟んで向かい側にも歩道がある、
〈手前〉の歩道を歩いている人の髪型と靴の色は?」
彼女は言われるままに〈手前〉の歩道を歩く女性を注視した。
「髪はショートカット、靴は白」
「いま、あの女性を見ている間に車が車道を通過した、
その車の色は何色か解ったかい?」
と聞くと、車が通過したことさえ気付かなかったと言った。
「今度は車道をはさんで〈向こう側の歩道〉を歩いている人の服の色と手に持っているものは?」
同じように、今度は〈向こう側の歩道〉を歩く歩行者を見つめた。
「黄色のワンピースに、土産物らしい紙の袋」
「今、車道を走って行った車はどっちに向かって走っていた?」
「右から左」
「色は?」
「黒」
「そのとおり、
焦点を合わせた先の物は見逃すことはあっても、
その手前を横切るものは決して見逃さない、これを画像構成上の原理と言う」
懇意にしている眼科医から聞いた話である。
「つまりコールする直前の焦点はクレーの放出口ではなく、
概ねクレーを撃破する<空間>に合わせておくこと、
ただし凝視してはいけない。
そうすれば、その前を横切るクレーは今までよりも楽に捕えることができる筈だ」
「へ〜え、そうか、なんとなくわかるような気がする」
射撃に対するセンスは卓越している、感じるところがあったのだろう、
目が輝いている。
「ただし、体得するまでは、一時スコアが下がるかも知れないが気にしてはいけない」
「ラジャー♪」
仮に我流で漸く17〜19点のアベレージに辿り着いたものが
新たに正しい射法を取り入れたとき、その直後のスコアは一時低下するものである、
それを何人も、みてきている。
しかし、正しい技法が身につけばそれまでよりも確実に良いスコアで安定してくる。
クレー射撃の上達とは、このようなことの積み重ねなのである。