クレー射撃上達虎の巻 §1《射撃の素質 その1》

 スタンス肩付け頬付け


クレー射撃


 初心者の姿があった。

クレー射撃を始めて間もないようである。


ベテランのH氏がコーチ役のようだ。


フォームの美しさでは定評のある氏の影響だろう、フォーム

はH氏とウリふたつである。


小柄なシルエットを“引き延ばして”いくとH氏のそれとピタリと重なる。


クレー射撃では一部の例外を除き“上手い射手はフォームが美しい

ひとつ幸運なことは、H氏以外のコーチがいないことである。

とりわけ初心者にとって大切なことは

指導をうけるコーチは原則一人でなければならない。


 初心者とみるや“教え魔”が殺到する。


正しい基礎を身につけるのに一番大切な時期なのだが、


彼らの殆どは我流の押しつけである。

多くの初心者はそれで迷い、当たらず、射撃から遠ざかってしまう。

しかしH氏が付いていれば“教え魔”の

魔手からは逃れることができるだろう。



これが後に、極めて短期間にクレー射撃の才能を開花させる重要な要素となる。

 体(足)の向きは基本的に正面を向いた状態から、右に45°回転させた位置、

これで銃を構えると銃口は無理なく正面のクレー放出口を見据える。


肩付けと頬付けは当たる要)と言われる、

これが不完全だとまず当たらない。

スタンスは概ね肩幅を良しとする。

そのどれもクリヤーしている。


H氏の特徴はスタンスを肩幅よりも、わずかに狭くとる。

これは左右に鋭角に切れるクレーを追う際、

体重の移動、スエーを防ぐために有効である。

スイングが軽くなると言う、場合によっては短所もあるが)




スコアは初心者としては“上”の部類だろう。

射撃もゴルフのように“ビギナーズラック”がないこともない。


無心で臨んだ最初のうちは、

本人も驚くほど当たる場合もある。


そこへ当てようとする欲が生まれ、

さらに我流が加わると結果は推して知るべしである。



だが、この初心者のスコアは決してビギナーズラックではない。




 クレーを割るタイミングは飛ぶ方向、高さにより微妙に異なる。

当たる、当たらないはともかく、コールから引き金を引く“間”が絶妙である。

H氏の的確な指導があるにせよ、短期間に、

ここまで体得できるものはそう多くはない。