クレー射撃上達虎の巻  【照星】を見てはいけない!

 久し振りに訪れたT射場。

今日はいつになく、華やいでいる。

いつもの“むつけき男達”のほかに

二人の若い女性が撃っている。


初心者であることは一目でわかる。

どうやら教習射撃のようである。



聞けば農業大学の学生だと言う。

動機はと問えば“就活”? ? ?


銃の所持許可狩猟免許を持っていると、

支庁への、つまり公務員への就職率

極めて有利なんだそうである。


深刻になっている鹿の食害対策にやっきになっている各支庁であるが、

銃や実猟の専門知識を持つ指導者がいないのが実情である。


そこで、それらの資格を持つ者を優先的に採用するということらしい。





休憩中の彼女たちに、少々意地悪な質問をしてみた。


ところで撃つ時に照星を見ている?」

「えッ、照星をみなければクレーを狙えませんよ」


目のピントがクレーに合っているか、照星に合っているかってこと」

「ウ〜ン、特に気にしていませんけど」


初心者には質問の意味すら解らないのは当然である。

これ以上の質問は彼女たちを混乱させる。




初心者にありがちな間違いは

クレーを追う時に照星をしっかり見てしまうことである。


頬付け、肩付けを決め、照星を待機位置にもってゆく、


ここまでは良いのだが、

クレーが出ると照星に合っていたピントがクレーにうつり、

追いつくと再び照星にピントを合わせ撃つ、

という非常に複雑な目の使い方をしてしまう。




面白い実験がある、


何か目標物を決め(壁に掛った時計の中心でもよい)

それを凝視したまま、

つまり時計の中心にピントをあわせ、

数メートル離れたところから人差し指の先を素早く

時計の中心に移動させる。


いとも簡単に両者は一致するはずである。


ところが指先にピントをあわせて同じ動作をすると、簡単にはいかない。


時計の中心がクレーで指先が照星とすれば、

照星を見てクレーを追うことが如何に不利なことかがわかる。


つまり、“見る“のはクレーであって、

照星は“見える”ものである、

言い方を変えると、視野のなかにあればよい、

ということ。




《※参考 クレー射撃虎の巻 《視点、焦点、画像構成》

http://d.hatena.ne.jp/kumanoritan/20120112/1326324143



しかし初心者にとって照星を見るなというのは、

非常に不安なことであり、じゃあ照星(銃口)はどうやって

クレーのところにもっていくのか?という疑問が生じる。


だが、これは心配いらない。

肩付けと頬付けがしっかりしていれば

銃をどの方向に振ろうが、

目を向けたところに必ず照星(銃口)も向いているからである。

これも射台に立って実際にやってみると容易に理解できるはずである。


始めた頃は先輩諸氏に“照星がクレーに追いついたら撃て”とはよく言われるのだが

人間の目というのは、遠くのものと、近くにあるものの

両方にピントを合わせることは不可能である。



上級者は、照星が見えてはいるが、見てはいない。




この目の遣い方を心得ておくべきだろう。