江戸の名医《金玉医者》
過激なタイトルですねェ。
江戸は宝暦年間、
あの田沼意次の活躍した時代、八丁堀に実在した元御典医『高橋玄秀』がそのひと。
あらゆる難病、とりわけ『気の病』を治す名医として江戸中の評判でした。
ある大店の娘さんが寝たきりになってしまいました。
現代で言う『鬱病』のようなもの。
口もきけず、食事ものどを通りません。
身は痩せ細るばかり。
江戸中の医者に診せましたが、薬石効無し。
そこで玄秀先生に声がかかります。
娘を診た玄秀先生、診察をするでもなく、世間話をして帰ります。
来る日も来る日も、冗談や芝居の話をしては帰っていきます。
しかし不思議なことに娘は薄皮を剥がすように、
明るく元気になっていきます。
そして玄秀先生の顔を見ただけで、声をたてて笑うようになりました。
娘の父親はどんな治療をしたのか問いただしても
玄秀先生はニヤニヤして「それは秘密です」と答えようとはしません。
それでも執拗に尋ねると、ようやく教えてもらうことができました。
じつは玄秀先生、診察のとき、娘の枕元で片膝を立てて、
褌の隙間から、男子のイチモツをチラチラと見せていたのです。
相手は年頃の娘、思わず病のことを忘れ、笑ってしまいました。
笑いが出れば、しめたもの、あとは快方にむかうのみ。
一種の精神療法といえるのかも知れません。
さて、この話にはサゲが続きます。
この娘のお父さん、
もっと元気にしてやろうと、
娘の傍らに行き、
「これを見なさい」と、かのイチモツを
“チラチラ”でなく、モロに出したからたまらない。
娘は目を回してしまいました。
あわてて玄秀先生を呼び、ことの顛末を話したところ、
「ナニ、少しではなく、全部だしてしまったのですか、
それは薬の効きすぎです」
おあとがよろしいようで。
立川談志 『金玉医者』