武士が食べなかった、美味しい魚!


 先日、友人と蕎麦屋で“天ざる”を注文したところ、

コハダの天ぷらが付いてきた。

寿司ネタとしても美味しい魚である。


ブリと同じように成長とともに名前が変わることでも知られる。

地方によって呼び名が変わるが、関東では

幼魚を“シンコ”⇒“コハダ”⇒“ナカズミ”⇒“コノシロ”


美味しく栄養(イワシの仲間だけに不飽和脂肪酸が豊富)豊かな、この魚、

武士が絶対に食べなかった魚としても知られている。

コノシロ(この城)を食う、 

コノシロ(この城)を焼く、に通じることから武士に忌み嫌われた。


また、切腹を命じられた武士に、最後に供された魚であることから、

別名“腹切り魚”と呼ばれた。


さらに、焼くと、人間を火葬したときと同じような臭いがすることも、

嫌われた原因のひとつである。



“コノシロ”の名前の由来にはこんな話もある。



… ぼーーやー よいこだ ねんねしなー …

漫画日本昔話』調で読んで下さいネ。


 むかしむかし、ある長者様のところに

それはそれは美しい娘がおったそうな。

ある日、国司様が娘を見初めて、

「エーイ 娘を差し出せい!」 (ここは水戸黄門の悪代官調)

と言ってきたんじゃ。


ところが娘には許婚者がおったんじゃ。


国司様に逆らえば、どんな仕打ちをされるか、


娘は三日三晩泣き明かしたそーじゃ。

そこで長者様は、あることを思いついた。

娘を引き取りに来た国司達に、

「娘は急に病気で死んでしまいましたー」と言って、

目の前で、

娘の代わりに“ツナシ”という魚を入れた棺を焼いてみせたんじゃ。


すると、それはもう

人間を焼いた臭いがたちこめ、国司たちは

本当に娘が死んだと思い、帰っていったそうな。


娘と許婚者は遠くの国で幸せに暮らしたそーな。


それまで“ツナシ”と呼ばれていた

この魚は、

娘の代わり⇒子の代わり⇒コノシロ 

と呼ばれるようになったそーじゃ。


めでたし、めでたし。




他に武士が口にしなかった魚が、河豚と鮪。


主君に忠義を尽くし、

一朝事あるときは、お家のために投げ出す命、

その大切な命を河豚ごときで失うは不忠なり、がその理由。


鮪はかつて“シビ”と呼ばれていたそうで、

これが『死日』に通じることから敬遠された。



反対に将軍様が毎朝食べた魚が、

“キス”と“鯛”

キスは魚へんに喜ぶと書く⇒鱚


鯛は言うまでもなく「めでたい」



おさむらいさんて結構、シャレに弱かったり。

エンギをかついだりするんですネ。