ア・ズンチャーベ


 ベンチャーズのミスプリントではありません。

1960年代を懐かしんで結成した、おじさんバンドなのです。

聴くひとの迷惑なんざァ知ったこっちゃありません。

落語の『寝床』のようなモンですナ。


多少やかましいのと、下手なことを我慢すれば、なかなか良いバンドです。


1960年代、ベンチャーズはそれまで音楽といえば聴くものと思っていた少年たちに、

楽器を手にし、自ら演奏する楽しみを教えてくれたのです。

しかし、当時はエレキギターを持つ者は“不良”のレッテルを貼られました。

最初の狼煙を上げたのは栃木県足利市教育委員会、曰く、

「青少年の心を蝕むものなので断固取り締まる!」

同警察署曰く「エレキやダンスは不当に疲労度も高いし、成長の妨げになる」


今なら吹き出すような話ですが、当時は大真面目。


その後、しばらくエレキから遠ざかっていたのですが、

あるとき“当時の少年たち”が集まり、

「昔のアレやってみないか?」となりました。

「何年、いや何十年も弾いていねえぞ」

誰かが「大丈夫、昔弾いていたんだから、指が覚えているさ」

この一言がとんでもないホラだとわかるのに時間はかかりませんでした。



折しも、当時のリードギターノーキー・エドワーズが来道、

メンバー一同、ライブを見に行きました。


前座の『札幌ベンチャーズ』『室蘭ベンチャーズ』の演奏を聴き、

そのレベルの違いに皆、目が点…


それでも血のにじむような?練習の結果、

なんとか曲のようなものになりました。


今年は結婚式のパーティーやイベントで数回、

騒音、いや演奏を聴いていただく機会がありました。


同年代の方達は「いやァ、懐かしかったよ」と、声をかけてくれましたが、

「上手かったねぇ」と言ったヤツはおりませんでしたなァ!


だれにも思い出の曲というのはあると思います。

それを聴くと、その頃の楽しい思い出や、切ない思いがよみがえってきます。


人生のもっとも多感であったであろう頃に触れたエレキサウンド

おじさんたちはその頃の匂いを思い出しています。


やっぱ、齢をとったんだべかねェ。