『私、休んでばっかりなの』




ポニーテールの似合う娘である。

外来語の形容が的を射ているか心もとないが、

エキゾチックという言葉がそれに近いだろうか。


あと数年すれば、間違いなく

匂うような“いい女”になるだろうことは容易に想像できる。

今はまだ、抜きんでた美貌と、

そこに未だ、あどけなさが同居している。


行きつけのガソリンスタンドで給油の間に一服していると、

傍らに立ち、

「しばらくですね」

「オレはしょっちゅうきているよ」

「あたし、休んでばっかりいるから」




汚れている、というのを通り越して、

真黒な油がこびりついている作業用のジャンバーがその美貌と

なんともミスマッチである。

綺麗なものを着、華やかな職に憧れる年頃だろうに。

この娘ならば、都会にでも出れば

モデルとしても立派に通用する肢体をも持ち合わせている。



以前、「日曜日とかって、ドライブなんか行くんですか」

と、話掛けてきたのを思い出した。

親子、いやそれ以上違うであろう年の差の男にたいして

興味でもあるのだろうか。

それともファザコンというヤツか?




「なんで休んでばかり?」

「…」

「休まなくなるオマジナイを知ってる?」

「なんですか、それって?」

「美味しいものを食べて、よく寝ることデス」


目は笑わず、口元だけが笑った。

その表情から彼女の境遇が少し見えたような気がした。


メアド聞いてもいいですか」

メモの代わりに名刺を渡す。


数日後の昼休み、メールが入る。

『今日、お休みなんです』

交代制なのだろう、平日である。



時折、接待で利用する料理屋。



「これ、美味しい」

コース料理を頬張りながら、今度は目が笑った。

私服の姿は、やはり普通の女の子だが、

その双眸には年に似合わぬ妖艶さが漂う


もうすぐ免許のとれる年だと言う。

軽自動車を買うのが夢らしい。


母子家庭で、中学を出て今のガソリンスタンドに勤めたと言う。

話のやり取りから利発さが読みとれる。

少なくとも高校に進むだけの頭脳は持ち合わせている。

だが、察したとおり、裕福な境遇ではないようだ。


彼女は“今”を語り、

私は自分が彼女の年の頃の話をした。

目を輝かせて聞いている。


美味しい料理とノンアルコールビール

彼女はウーロン茶。


楽しい時の過ぎるのは早い。


門限は何時?」

少し、ぶっきらぼうに問うと、



「今日は友達の家に行くと言ってきたの…、

泊まってくるかも知れないからって」