トイレを借りると不義密通?
人間、何が原因で命を落とすかわからない。
佐賀鍋島藩のある侍が城下を歩いていると、急に腹痛に見舞われた。
近くの家に駆け込み
「ゴメン、ちょっとトイレを貸してくんない」
と侍言葉で言った。
多分「恐縮に存ずるが、拙者不意の腹痛ゆえ、厠を御貸し願いたい」てな調子。
「いいわよ、汚くしてるけど、どうぞ」
と、まァここまでは、なんでもない話なのだが、そのあとがまずかった。
家にいた若い女の傍らに袴を脱ぎ捨て、奥のトイレに一目散。
しばらくして、スッキリした顔で出てきた侍、女のそばには脱ぎ捨てられた袴、
間の悪い時はしょうがないもので、そこへ亭主が帰ってきた。
この情景を見て「この二人は、天下の御政道について話をしているな」
などと考えるノーテンキな亭主はいない。
亭主は女房と侍を、おおそれながら、と訴えた。
訴えを受けた藩当局は二人を取り調べ、下した、おしりの半分、つまり半ケツ、イヤ判決は、
「女の前で無遠慮に袴を脱いだ侍、それを許した女、共に不義密通同様の振る舞いである」
「んな、ムチャな」 という嘆願は聞き入れられず、
トイレを借りた侍は切腹、トイレを貸した女も哀れ死罪となってしまった。
かの鍋島藩士、山本常朝“武士道とは死ぬこととみつけたり”の名著『葉隠れ』にある
実話である。
※トイレの話→http://kumasan-kumasan.blogspot.com/