“便所”の名がついた名刀
この日本刀の名になんと“便所”=“雪隠”を冠したものがある。
初代から九代続く刀工がいた。
代々忠吉(ただよし)を名乗り、
つくる刀は“肥前忠吉”と呼ばれ名刀とされた。
ある日、四代目忠吉が外出から帰ると、妻の姿がみえない。
探しまわってみると、こともあろうに屏風の陰で、妻は弟子の菊平と浮気の最中。
「おのれ!不義者」と、重ねて四つに切ろうとしたかは定かでないが、
抜刀し、二人に切りかかった、しかし刀は鴨居に食い込み、この隙に菊平は
雪隠に逃げ込む、しかし追いついた忠吉に一刀両断のもとに切られて、あえない最期。
とって返した忠吉は妻も切り捨てた。
不義密通を働いた密夫をトイレで「成敗」。
これ以後、人々は四代目忠吉の作る刀を「雪隠忠吉」と呼んだ。
それにしても“武士の魂”に雪隠の名をつけるとはネェ、
人の口とは、げに恐ろしいものです。